パワーと中毒、精神病、子育てとトラウマ by ガボール・マテ

非暴力コミュニケーション活動仲間、安納けんさんに紹介してもらったストレスや中毒を研究している医師のガボール・マテ。

彼の話は面白い!

なぜ、精神的に病んでいる人がたくさんいるのか?
(僕とかも鬱病になったりするし、たくさんの自信のない人、長期的に不安にかられている人、何らかの中毒や依存がある人と会ってきた)
なぜ、これだけ医療とテクノロジーと科学が進化して、文明が最高峰にいるはずなのに、精神病がどんどん増えているのか?
しかも子供たちに?

なぜ、痛みや心の病と向き合いながら、いろんなことを学んで取り組むのに(NVCとかマインドフルネスとか瞑想とか)、また痛みが再発してしまったり、鬱から抜け出せない状態に戻ってしまうのか?

なぜ、同じ問題が近しい人たちと繰り返されるのか?

なぜ、人類は暴力、搾取、戦争、争い事、環境破壊を止められないのか?

そんな問いに、彼の視点が新鮮な光を当てている感じがする。

中毒、トラウマ、それらを引き起こしている社会と経済の仕組み。子供の捉え方(しつける必要がある存在など)と子育てから生まれるトラウマのサイクル、そのトラウマを持った人が権力のあるリーダー(米大統領のドナルド・トランプとか)になってしまう社会システムなどなど、めちゃめちゃ興味深い話が多い。

自由意志についても考えさせられる。どこまで、僕たちは自力で心の病を癒せるのだろうか?個人に焦点を当ててしまう視点そのものが状況を悪化させているのではないのか?

【自由意志についての余談】
ちなみに、自由意志というものが科学的根拠のない神話(キリスト教由来)だとユヴァル・ハラリが書いていた。それは、僕にとってかなり衝撃的な話しだった。さらに、ケンさんが進めてくれたロバート・サポルスキーの話しでさらに自由意志に対する疑いがました(自由意志はどこまであるのか?神経学者ロバート・サポルスキーの衝撃的なはなし)。自由意志が存在しないのであれば、または過剰評価されているとしたら、それを土台としている僕たちの世界観や社会制度が大きく問われるよね。余談が長くなってきたから、ひとまず本題へ。

残念ながら、日本語のガボール・マテ関連情報が非常に少ないんだけど、スタートとしては下のTEDxトークがいいかも。その後に、僕がとった彼の別の話しのノートを翻訳したものを書いた。Check it out.

みんなは冒頭の問いにどう答えるかな?

セッティングボタンを押して、字幕ボタンを押すと、日本語字幕が付けられるよ

マテ、ガボール

バンクーバー在住の医師。注意欠陥多動性障害をテーマにしたベストセラー『ばらばらの心 Scattered Mind』の著者。ほかにゴードン・ノイフェルトとの共著による『子供を離さないで:どうして親が重要なのか Hold on to Your Kids: Why Parents Matter』がある。

開業医を20年以上を続け、緩和ケア専門医で心理セラピストでもある。バンクーバーのダウンタウン・イーストサイドにある路上生活者施設の医療スタッフも務める。また、『バンクーバー・サン』紙と『ザ・グローブ・アンド・メイル』紙に長年コラムを執筆している。

agawa288/Dollar Photo Club

ガボール・マテの英語のトークを聞いたときにとったノート
精神科医の学会での講演だったと思う

*厳密な言葉ではないかも(映像を見ながらノートをとってそれを役している)。急ぎで訳したから雑かも

ここで、addictionの話が中心になるんだけど、中毒と訳した。後半は子育てとトラウマと社会の話しで凄く面白かった。なぜ、多くの若者が悩んでいるのか、なぜ親子関係で深い痛みが伴うのか、そしてそこにどう世界観や経済が影響しているのか。Check it out!

【現代社会と医療】

・現代社会では、伝染しない病気や自己免疫患が年々増えている

・より多くの子供達に薬が処方されている

・若者(おそらくデータは西洋圏)の中で不安神経症が一番増えている診断

・西洋医学の医者となるためのトレーニングでは、体と心は分離されていて、個人も環境から分離されていて、社会は患者の病気になんの影響もないという前提で行われている。

中毒者に対する一般的な考え
・中毒は個人的な選択(意思)の問題として扱われて、依存者個人を治そうとする。
・「中毒は脳の病気」、なので遺伝学的に研究する必要がある。これもまた個人の問題にする視点

・では、なぜ「中毒」悪化していて、中毒者が増えているのか?

・主流の西洋医療は、生物医学が中心で分子生物学が土台になっている。なんでも個人に視野を狭め傾向がある。

・ストレスは社会的なインタラクションから生まれるもので、個人の心身の問題以上の現象

・私たちの脳は個人の中で起きているプロセスではなく、人や環境と常に影響されている。

・ブッダがインタービーイング(相互存在)の話をしたように、全てはつながっている

・例えばこんな研究結果がある。黒人の女性は、差別的な体験をすればするほど喘息になりやすい。

・遺伝や個人主義的なアプローチは、現在の社会、政治、経済制度を守ってしまっている。「社会は問題ではない、きっと個人の問題だ」と。

・孤立はストレスを起こし、精神病や炎症などを引き起こしてしまう

・孤立は個人の問題ではなく、社会の問題

・Facebookはアタッチメント(愛着)不足などを埋め合わせるための手段

・Facebookで「いいね」をいっぱい押してもらうと、神経伝達物質ドパミン(心地が良い)が分泌されて、中毒性がものすごく高い。これがFacebookが大成功した理由の一つ。脳のハッキング。参考になる本 Hacking the American Mind

・私たちの文化は人の生命ニーズ(本当に必要としているもの)を満たさないから、私たちはそれを補うために本質的なニーズを偽のニーズに置き換えている

・とてもよくできている「美しい」システム。美しさが「経済的利益」だと思う人であれば。

・商品で生命ニーズを置き換えることによって、いろんなものが売り付けられる。消費者は、欲しいものが必要としているものだと信じている。

・ストレスの原因は、自分の生活がコントロールができないこと、不確実性、必要な情報不足

・どれだけの人が、本当に自分の人生にとって大きな影響を与える意思決定に参加できているか?住んでいる地域がどう作られていくか、どんなエネルギーが社会に出回るか、どういう目的でエネルギーが使われるか、軍隊がどこでどういう目的で戦うか。

・自由があるというけど、選択肢は極めて少ない

・現代人はあまりにも生命ニーズを満たすことに必死だから、生命ニーズを満たしそうな商品を消費続けるが、ぜんぜん生命ニーズは満たされない

Picture from https://world.edu/

【子供の話し】

・多くの子どもは行動心理学に基づいた子育てを体験している

・多くの親は、子供の行動をどうコントロールするかに取り組んでいる

「どうすれば、子の行動を抑えたりコントロールできるか」

・自己免疫患病は社会の産業化が進むとともに増えていく

・今の経済が必要としていることに答えるために、子供のニーズの優先順位が下がってしまっている

・僕たちの社会ではアタッチメントのニーズが無視されている

西洋医学と心理学の前提は『この社会で「正常」なものは健康的で自然である』これこそが問題

・人類の歴史上、私たちは狩猟採取をしていた

・その時代は、子どもは常に親とともにいて、幼児をどこにでも親が運んだ

・子どもたちは、複数の大人たちとアタッチメントを持っていた

・そして、ほとんどの場合、子供達に対して暴力を振るわなかった

・最新の研究で判明したことは、おばあさんの存在は孫の健康にいいということ

・おばあさんが孫の近くにいれば、近いほど孫にいい

・ADHDは精神病ではない。遺伝的なものでもない、なぜかというとADHDの診断されている人の数は伸び続けているから。ADHDは脳がストレスから自信を守るために現れる

・脳は環境とともに発達する

・人間の生育を脅かす環境的や社会的な出来事が起きたときに、短期的な身体と精神の適応が行われる。その時のサバイバルやアダプテーションに必要だったものの、長期的には学び、健康、寿命に悪影響がある。

・精神病を予防するには、出産前から取り組む必要がある。妊娠中も母親のストレスが子供の発育を大きく影響する。

・私たちは、トラウマを抱えたリーダーを選択してしまっている。ドナルドトランプ、ヒラリークリントン、サラペーレンなど。そして、多くの人は彼らを見ても、トラウマを抱えていることに気づいていない。

・Eric Frommの言葉。精神的健康の定義は、個人が社会の基準に合わせることではなく、真逆の、健全な社会がどれだけ人間の違いを愛するキャパを培うかである。

・トラウマというのは、自分(self)と分離していること

・最近、自分探しをする人が増している

・そもそも、なぜ僕たちは自分を探す必要ができたのか?

・自分を失う理由は、他者の期待に合わせるように育てられたから。そして、アタッチメントやトラウマに無関心な社会の期待に合わせようとしてきたから。

・トラウマが今の社会と経済の構造を作って、強化し続けている

・子供が必要としているattention(世話?注目?)を得られないと、より魅力的になろうと必死になる。魅力的になれば、注目してもらえると思うようになる。だから、$30billionの美容産業が存在するんだ。ありのままの自分として承認されないと、承認をもらうために必死になるんだ。存在価値を認められなかった子は、常に他の人の期待に答えようと必死になる。なぜなら、自分をどう大事にするかが分からないから。ありのままの自分が特別であると感じられないと、demanding(注文の多い人)になってしまうかもしれない。必要としていた尊重が得られなかった子は、人の関心を買うので必死になる。そうすると尊重はソーシャル商品になる。

・自己肯定感を得るためにはどれだけの「いいね」が必要だろう?

・ありのままの自分が大切だと感じなかった私たちは、人を助けたり、人に貢献することに必死になってしまう。精神科医や医師などにそういう傾向がある。人を助けることは何も悪くない。問題は、なぜそれをしているのか?私たちが人を助けている時はどういう存在なのか?自分たちが大切である(存在する価値がある)ことを感じるためなのか?誰のニーズが満たされているのか?もし、自分が大切である(存在する価値がある)ことを自分で満たすことができないからやっているとしたら、私たちの生活を困難にするものとなってしまう。そして、人を助ける努力を蝕んでしまう。compulsive helper 強迫観念にとらわれたように人に貢献しようとしてしまう。

・ありのままで愛されなかった体験をしてたら、とてもやさしい人(好かれやすい人)になろうとしてしまうかもしれない。

・これが人間としてのニーズを満たさない文化の中で人格が形成されるプロセス

・トラウマに基づいたケアが必要なんだ

・私たちの社会では「普通」とは神話なんだ。人間の本当のニーズを考えたときに、私たちの「普通」という概念は不健康で不自然なんだ

・私たちの身体的、精神的な病は異常な状況に対しての正常な反応だ。

・Dr Narvezの言葉「文化は健康と健やかさを育むこともできれば蝕むこともできる、そして私たちの人間性を促すこともできれば妨げることもする。」