【コロナショック】時代の分岐点とパーマカルチャーの道

パーマカルチャーの創始者の一人、デビット・ホルムグレンの本「未来のシナリオ」(2009年)に、これからの人類の方向性を4つに分けた興味深い図がある。

「未来のシナリオ」では、主に気候変動とピークオイル*という、パーマカルチャー界の「人類が直面している二大危機」に焦点を当てている。気候変動はみんなが知っての通り、地球での暮らしが大きく妨げられる地球全体の危機。ピークオイル はまだあまりメインストリーム(一般社会)では認識されていない重要なテーマ。オイル(石油)は人類の大多数が依存しているあらゆるシステム(エネルギー、経済、農業、製造、移動と輸送、医療、軍隊、日々の生活)の血液のようなもの。石油の生産がピークを超えたら、そこからは急激に石油の取り合いが過激化していく(イラク戦争とか)。石油の価格が不安定になり、経済と政治と社会が不安定になっていくという予測されている。
*参考:OUR WORLD 国連大学ウェブマガジン ピークオイルから 低エネルギー化へ

もちろん、金融経済も気候変動やピークオイル という大きなシステムの変化に大きく影響される。グローバル経済を可能にしている重要な土台は、安定した地球の生命維持システム(それを切り売りしてグローバル経済は成り立っているともいえる)。それと、安くて高密度のエネルギー源(化石燃料)。因みに、化石燃料ほど柔軟ではなく、扱いも複雑な原子力の原料(ウランなど)も有限資源で、生産のピークに達しているという説もある。ピークに達するかどうかということが論点ではなく(有限資源を使い続けたらなくなるから)、いつピークを超えるかがポイント。難しいのは、ピークをある程度超えて、いろんなシステムが不安定になるまでは残念ながらほとんどの人は気づかない。米軍やエネルギー業界の人はそこが活動の要なので、かなり研究を進めているけど一般市民へは積極的に情報発信していない(記事は探せばある)。

さて、グラフにはこれまでの時代(小規模な持続可能な社会 → 産業革命以降の現代社会)と、これからの時代のシナリオが描かれている。僕たちは今クライマックス(エネルギー消費のピーク)にいるという想定。X軸は時間、Y軸はエネルギー資源の消費量、人口、環境汚染/温室ガス排出量(これらは比例しているという見解)を表している。

ホルムグレンが取り上げた4つの未来のシナリオは

  • テクノロジー爆発(ハイテクによる急激な進化)
  • テクノ安定社会(現状維持的な感じ)
  • 低エネルギー/低炭素型パーマカルチャー社会
  • 崩壊(映画マッドマックスのような世界)

STORIES MATTER
人間はストーリーの中で生きているから、信じるストーリーが言動を影響して、それによってストーリー(想像)が現実になっていく。それとともに、想像だけでは思うがままにいかないリアリティーもある。例えば、物理的な制限、化石燃料などの有限資源はなくなるとか。もう一つは、信じていても条件がそろってないと実現しないものもある。例えば、大和大帝国は戦争に必ず勝つと確信していたり、ナチも選ばれた人たちだと信じて世界制覇を目指したけど、実現しなかった。アメリカも「世界一の大国」というストーリーに囚われているけど、これから違う現実を痛感するタイミングじゃないかな(そもそも国より多国籍企業の方がパワーを持っている時代だし)。

ストーリーは全てではないけど、僕たちの方向性(一人ひとりの人生から人類の方向性まで)を大きく誘導する重要なもの。気候変動危機、今の経済と民主主義への信頼の低迷、未来への不安、そしてコロナショックとグローバル経済の不安定化などの複合的な現象が、僕たちを新しいストーリーへ押し進めている。

みんなはどんなストーリーを信じている?

そして、なんでそのストーリーを信じている?その根拠は?

そのストーリーは現実を反映しながら、希望の方向性を示している?

僕は、東京アーバンパーマカルチャーを立ち上げたのもあって、パーマカルチャー的社会の未来像を信じているし、そこに向かって土壌を育てながら種を全力で植えている。どうなるかは分からないけど、一番現実的でワクワクする未来のシナリオだと思っている。

実際、テクノロジーの急激な進化でSciFi映画のような「豊か」な世界になっても、いままで以上に土に触れながらパーマカルチャー的な暮らしを選び続けると思う。I just love it so much!

それぞれの未来のシナリオを僕なりの解釈で説明してみたい。まだ、整理しきれてないから、後ほど編集していくと思うけど、とりあえず初稿としてチャレンジ。ホルムグレンは「エネルギー」に焦点を当ててたから、僕の説明とは違う部分がある。彼の捉え方に関心がある人は「未来のシナリオ」を読んでね。

テクノロジー爆発(ハイテクによる急激な進化)

以前投稿した【内閣府が目指す「すばらしい新世界」】がまさにこのシナリオを表している。

Google, Amazon, Facebook, Microsoft, Teslaなど(適当に思いついた多国籍企業)が押し進めているハイテク未来がおそらくこのシナリオ。

大きな問題としては、その未来を実現するために必要な膨大なエネルギーをどこから得るのか?現状、ハイテクECOアピールをしているわりには、みな化石燃料に依存している。(ホルムグレンの「未来のシナリオ」では、僕たちは何らかの大きなブレイクスルーがあって、今まで以上のエネルギーを生産消費できるようになるというのがこのシナリオ。)

大きな気がかりとしては、格差のようなテクノロジーの問題ではなく、人間のあり方の問題をどう扱うかは明確じゃない。これからはハイテクエリートと一般市民の間で巨大な情報格差がどんどん広がっていく。ユヴァル・ノア・ハラリ(ホモデウスの著者)やショシャナ・ズボフ(監視資本主義の著者)がこの現状への警告を出してきた。

地球が崩壊する前に宇宙にコロニーを作ろうとしている大金持ちもいるけど、おそらく大金持ちと彼らに従う労働者(またはロボット)しか連れて行けないんじゃないかな。人間が抱えている課題を地球で解決できなかったら、宇宙のコロニーでも同じことになるんじゃないかな?

監視資本主義は別に悪い人たちがみんなをこらしめるための陰謀ではなく(おそらく)、今の資本主義とBig Tech(テクノロジー多国籍企業)の融合から生まれる思想とシステム。一部の「有能」なテクノエリートがみんなの課題をテクノロジーで解決しながら、よりパワーと富を集めるビジョン。彼らはそういうストーリーの中で生きている。

グローバル経済バブル崩壊、安いエネルギー不足(ピークオイル などで)、世界中の市民による抵抗運動などで実現しない可能性が高いと僕は思う。

テクノ安定社会(現状維持的な感じ)

https://dentsu-ho.com/articles/6329

これは、今まで通りって感じかな
コロナショック以前と同じ軌道

様々な危機(天災、経済バブルが弾ける、石油資源の枯渇など)をなんとかテクノロジーやイノベーション(自然エネルギー、ブロックチェーン、リモートワーク、スマートシティとか)、社会や経済システムの再編で乗り越えていく感じ。これがもしかしたら一番想像しやすいシナリオで、大多数の人が望んでいるポストコロナの世界かも。はやくコロナ以前の日常に戻りたいと思っている人は少なくないんじゃないかな?

社会にストーリーを広める教育や大手メディアがこの世界観をずっと僕たちに植えつけ続けてきた。人間の自然な思考傾向としても「明日は今日とあまり変わらない」と考えるから、これが一番信じやすいシナリオだと思う。人間は急激な変化を想像することがあまり得意ではないらしい(例えば、2月のコロナウィルスのニュースを聞いて、「緊急事態宣言」という事態になることを想像した人は少ないだろう)。

大多数の人は、本当に大変になるまで(仕事が見つからないとか、お金があっても食料が買えないとか)、信じ続けると思う。

僕の中では、これはタイタニックに乗っている感じ。今の人間の「凄さ」や未来に開発されるであろうテクノロジーとイノベーションを信じ続けて、人類が直面している巨大な危機の根元を無視しするシナリオ。それは、世界最大の豪華客船の中でシャンパンを飲みながら沈没に向かう道。事態の深刻さに気づいた時には想定してなかった状況にびっくりしながら、必死に救命ボートを探すしかない(タイタニックには救命ボートが人数分なかった)。バブル崩壊も、原発事故も、リーマンショックも、コロナショックも、一部の人は想定してきたし、警告もずっとしてきた。次はもっと大変なショックがくると僕や仲間は考えている。

恐れて生きる必要はないけど、歴史を振り返りながら全体像を捉えようとして、それに備えることは安心と希望を育む生き方だと思う。

創造的な反応 低エネルギー/低炭素型パーマカルチャー的社会

ここには、パーマカルチャー、エコビレッジ、トランジションタウン、ローカリゼーション、協同組合、地産地消などのムーブメントが取り組んできたシナリオ。

様々な人類が抱えている難題と、今までの持続可能な文化やコミュニティを研究していくと、パーマカルチャー的未来がとても魅力的なシナリオだと感じる。

おそらく気候変動やピークオイル、グローバル経済の低迷などで、今までの高消費型経済と暮らしは実現できなくなっていく。エネルギー消費量を減らさざるおえない状況の中、創造的で豊かな暮らしを市民同士で協力し合うのがこの未来像。複雑なテクノロジー、専門家、大企業や政府に頼るのではなく、自分たちで作って維持できる地域に根差した持続可能なコミュニティシステムの世界。

「しあわせの経済」ムーブメントがこのシナリオを創造している多様な人たちをつなげているので、そのネットワークは僕たちがもっている素敵な資源の一つ。何より大切なのが横のつながり。横の繋がりを育むのは中々難しいけど、それがあればあるほど豊かな未来の可能性が大きくなっていく。

もう一つ重要なのが実践者。理論だけでは食っていけない。土壌を育てて、大地に種や木を植えて、雨水をためて、お互いを支え合いながらコミュニティを育てる地道な活動が超大事!

「東京アーバンパーマカルチャー」や「パーマカルチャーと平和道場」を立ち上げたのは、この世界観の実践者を増やすため。ビジョンを共有しながら、実践したい人をサポートして、コミュニティーや場を創造することが僕が取り組んできた活動。みんなと一緒に楽しくこの方向性を確実に実現していきたい。

今の大きなビジョンとしては、千葉県のいすみ市にこのシナリオの実践者を育てる大学(シューマッハカレッジのような)を作ることと、いすみ市をエコビレッジ化していくこと。協力者 come on!

言葉だけじゃ面白くないからイメージで一緒に思い描いてみよう

from communitecture
by Paul Kearsley

崩壊(映画マッドマックスのような世界?)

パーマカルチャー界でもこのシナリオを想定して準備している人も少なくはない。人類は様々な複合的な危機に上手く対応できず、経済、社会、政治、生態系が破綻するシナリオ。

このシナリオの場合、パーマカルチャーは救命ボートの役割を果たす。生きるために必要な要素(水、食料、種、動物、薬草、コミュニティなど)を揃えたオアシスのような場所。アメリカのパーマカルチャー実践者の中では銃とかも備えている人がいるらしく、食料を奪いにくるギャングなどから自分たちを守るところまで想定している。まさに、映画マッドマックスの世界。

あまり考えたくないけど、大きな社会としてはこのシナリオに向かっている気がする。そういう意味でも、パーマカルチャーの実践者を増やして、命を支えられる救命ボートをできるだけ多く創造していきたい。

まとめ

THIS IS OUR CHANCE!

コロナショックで、僕たちは貴重な機会をいただいている。誰も止められなかった、ものすごい勢いで突き進むグローバル経済と、その中で加速化する僕たちの生活が、世界中で減速している。

でも、これは一瞬で消えてしまうwindow of opportunity(チャンスがチャンスである短い期間)かもしれない。

日本での緊急事態宣言は解除されたけど、人類の緊急事態は続いている。このまま、元に戻ろうとすれば、事態は急激に悪化する一方。もしかしたら、さらに加速したハイテクグローバル経済社会がフル稼働するかもしれない。

The Great Transition(大転換期)の大きな分岐点にいる僕たちは、どの未来を選ぶか。ただ、待ってても望む未来はやってこない。タネをまいて、苗を育てて、周りの人とつながって、横の繋がりを育んで、共同体を創造していくことが、より美しい、やさしい、希望のある社会への道。

Lets make it happen!

地球は本来はとても豊かな星
その奇跡的な場所で苦しむ必要はない
僕たちが変わって、僕たちが作ってきたシステムを変えれば
平和で豊かな未来が実現すると信じている

一緒に向かおう
to a more beautiful world our hearts know is possible

愛に動かされて
共生革命家

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・4月17日【コロナウィルス】今の心境と仲間の方針 version4月17日

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・5月15日【コロナウィルス】ショックドクトリン惨事便乗型資本主義 by 堤未果

パーマカルチャーツアーやってるよ。