【Greenz】パーマカルチャー的パンの世界

最近、ヘビー級の記事が続いていたので、ライトで美味しい話をシェアしたい。

僕のパンの情熱
美味しいのもあるけど、自分のアートとしても、哲学としても、天然酵母のパンは僕にとってとても重要な存在なんだ

前のブログで書いた記事もよかったら
パンを愛している男(革命的なパンの世界)

去年はソーラーオーブン(太陽光で調理する道具)でパン焼きに成功した!
(ちょっと自慢)

小麦粉の食べ過ぎには注意!
心身の調子が悪くなるよ〜

以下、Greenz.jpより(原文はこのリンク先

唐突だけど、僕はパンを愛してる。ほぼ毎日、天然酵母のパンを自分で焼いているくらい。だから今日は、パンの哲学を語らせてほしい!! ……といってもこの話、「消費者から創造者へ」っていう、まさにこの連載のテーマのひとつを表しているんだよね。

振り返ってみると、中学生や高校生の頃は、僕だって安くて大きくてカロリーの高い「お得」なパンをコンビニで買って食べていた。原材料とかを見ると、聞いたこともないものがたくさん入っているやつ。

それからなんだかこだわり始めて、コンビニではなく、パン屋さんのチェーン店でバゲットを買ったりして、「ちょっと大人になったなあ」なんて思ってた。さらに家族経営のパン屋さんに行くようになって、どんな人がつくっているのかとか、「食パンはこの店」みたいにこだわりが深くなっていった。値段勝負の大量生産の商品から、人の存在が感じられる小規模で手づくりのパンに惹かれるようになった。

大学時代には、周りにビールやパンを自分でつくる発酵好きの人たちとたくさん出会ったんだけど、それは僕と天然酵母のパンとの初めての出合いでもあったんだ。

みんなでガーデンをやりながら寮生活をする大学のプログラムに参加したとき、そこにいたみんなが「アースオーブンをつくろう!」みたいに話していて。それまで僕は「オーブンはお金で買うもの」とばかり思っていたから、自分たちでオーブンごとパンをつくっちゃうのを見て、「なんでもつくれるんだ」って、その自由さと創造性にすごく感動したのを覚えてる。

オーブンもパンも自分たちでつくって、畑でできた有機野菜と一緒にみんなで食べる。昔食べていた、どこから来たのかわからない、プラスチックに包装された謎の「パンもどき」を食べるのとは全然違う、恵みが循環している感覚がそこにはあった。それ以来、パンは買うのではなく、つくるのが当たり前になっていったんだ。究極的には、パンに必要なのは水と小麦粉だけ。塩が入るとなお美味しくできる。あとは、小麦粉をエサにする菌。

そんな感じで、いまではほぼ毎日パンを焼いているんだけど……実はオーブンじゃなくて、ホームベーカリーを使ってる(笑) というのも、僕が住んでいる家具付きのアパートに初めから置いてあったから。確かに初めは「ホームベーカリーで焼いたパンなんて、本物のパンじゃない!」なんて見下してたけど、「ないものを買うのではなく、すでに周りにある資源を活用する」のはパーマカルチャーの大事な考え方だし、実際に使ってみたら、もう最高(笑) 焼くのもこねるのも全部やってくれるし、設定すれば朝にはできあがってるし!

だけど酵母はもちろん天然酵母。天然酵母って、小麦粉と水をエサみたいにあげると増えるし、たまに使ってあげないと増えすぎて、栄養が足りなくなって死滅するんだよね。まさに生態系。まあ、1か月とかエサを忘れて死なせちゃうこともたまにあるんだけど(笑)、でも誰かが同じ菌を育てていたら、再生させることもできる。これってパーマカルチャーで言う、「重要機能のバックアップ」。ひとつしかないと、なくなったら再生できないけど、バックアップがあれば、再生できるんだ。

さらに、世界中のどこに行ってもその場所の菌があって、菌が違えば味も違う。だからパンって実は超ローカルな食べものでもある。

ちなみに僕はサンフランシスコのすごく酸っぱいパン、サワードウが好きなんだけど、友達の友達から譲ってもらった酵母を長時間発酵させて酸っぱさを再現している。僕がもらった酵母は、パーマカルチャー仲間で「生意気」というアーティストのひとり、マイケルからもらったんだけど、彼は千葉の鴨川に住んでいる知人からその酵母をもらったらしい。

20年くらい前から育てられてきた酵母なんだけど、おおもとはどこからスタートしたのか、わからない。だけど、そういう縁とか、菌でつながっていくのって、すごく面白いよね。最近は、酵母を持って出張や旅に出て、その酵母を日本中の出会う人に配っている。

そんな風に、普通のイースト菌だと単一作物みたいにどこも同じものだけど、天然酵母にはストーリーがあるんだ。誰がその菌を初めて、何からできていて、どんな風に受け継いだか……さらにそれをみんなでシェアしあって、誰かの酵母を自分の家で育てていく。そうやって菌や種をシェアするのって、昔は当たり前にあった、すごく豊かな文化だったと思うんだ。そうじゃないと世界中にこんなに菌や種が広がらなかったからね。

パーマカルチャーには「地球を大事に(Care for Earth)」「人を大事に(Care for People)」「豊かさを分かち合う(Share the Abundance)」という3つの大事な倫理があるけど、パンにはそのすべてが詰まっていると思う。特に自分でつくったパンを人にあげるのって、僕はすごく楽しいんだよね。

最近は近所の人に焼きたてパンを理由もなくプレゼントするのにハマっている。ゲリラパン! みんなの喜び方も半端じゃないし、これってとても美しい文化だと思う。食べものを通して豊かさを分かち合い、自然や人とのつながりを育むのは、人間にとってすごく根本的なことだと思うんだ。

たまにこだわりの美味しいパン屋さんに行って買うこともあるけど、自分でつくったパンより美味しいと思うことはあまりない。自分でつくれば、自分の好きな味の、焼きたてのパンが、食べられるわけだから。プライスが付いているものは、どうしてもどこか安い感じがするけど、お金で買えないプライスレスなものには、その瞬間しか存在しない、素晴らしい意味があると思う。命の世界ってそういうものなんじゃないかな。

こんな感じで、僕はパンを通して「消費者から創造者へ」という道を歩んだんだけど、パンに限らず、味噌だって家具だって、自分でつくろうと思ったらつくれるんだ。何をどうやって手に入れるかで、自分の世界が変わる。資本主義社会に出回る数字の並んだ「商品」より、自分や近所の人や自然がつくったもののほうが、自分たちの近くにあって、もっと心身を深く満たすものだと思うんだ。

(編集: 岡澤浩太郎)

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