3回目のアジア・エコバーシティ・ギャザリングが5月11日~15日にネパールで行われた。
日本からは、僕と中島美紗子と中島麦音の3人が参加した。
素敵な体験をみんなとシェアしたかったのと、日本のエコバーシティ運動に関わる仲間たちを見つけるためにこの記事を書くことにした。
一緒に活動したい人とぜひつながりたい。
Ecoversities Alliance は、現代の重大な問題に応えるために、人間とエコロジーの繁栄を育む高等教育を re-imagine 再想像することに取り組んでいる世界中の学習(教育)実践者のコミュニティです。
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因みに今年の国際ギャザリング(数百人規模)は、ブラジルで8月17日-22日(2024年)に行われた。ちょうど、シューマッハカレッジに行ってたから、残念ながら今年も行けなかった。
シューマッハカレッジも、実はエコバーシティの一つ。サティシュとマニッシュもガンジーの思想を実践している仲間たち。
ここまでの ECOVERSITY エコバーシティ関連の記事はここ → http://tokyourbanpermaculture.com/tag/エコバーシティ/
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今年のエコバーシティギャザリングは、ネパールで開催されたのもあって、ネパール人とインド人が多かった。起業家を育てるKings Collegeが主催していたみたいで、僕はそのビジネススクールの教員と代表などとバスで会場に向かった。印象的だったのが、彼らが数時間ずっと笑いながら哲学的な議論したり、みんなで大声で歌ったりしていたこと。遠足に行く元気な子供みたいな、イキイキとした雰囲気だった。
会場は、大きな川沿いの手作りリゾートのような場所。ほとんどの参加者は、テント泊。山水がそのままたまるプールがあり、ラフティングやカヤック体験も提供しているところ。
主催者曰く、大学でギャザリングすると、みんなが囚われたままでエコバーシティのスピリットに入れないので、色々探していたら、この会場に導かれたと。
セッティングは、ずごく大事。
Un-conference (非学会)は、ゆるいけどまとまりがあり、なんでもウェルカムな感じもあるけど、アジェンダもある、絶妙な無秩序と秩序の間。キッチリはしてない。それぞれが、自分のやりたいセッションを提供したり、特別ゲストがワークをしたり(ネパールだったからマインドフルネスが多かった)、お互いの活動をどう応援し合うかのゲームセッションがあった。
そんな中、
・教育とはなんなのか?
・現代のさまざまな危機と、学校教育はどう関係があるのか?
・学ぶとは?
・遊ぶとは?
・お互いを大切にするとは?
・地球で暮らすとは?
・to live in service 奉仕者として生きるとは?
などを、多様な常識/非常識を持った人たちから、沢山刺激されながら考えるとても貴重な時間だった。
マニッシュ・ジェーン Manish Jain
エコバーシティを提唱している中心人物の一人は、インドのウダイプール出身のマニッシュ。僕は、文化人類学者の辻信一さんのお誘いで、ヘレナ・ノーバーグホッジ(「懐かしい未来」、「幸せの経済学」など)が主催したローカリゼーション運動の戦略会議に参加した時に、マニッシュと出会った。
マニッシュのプロフィール
ハーバード大学卒業後、UNESCO、UNICEF、World Bank、モーガンスタンレー証券会社株式会社などで働いてから、その世界に絶望し仕事を辞めて、教育活動と奉仕活動に専念。現在は、ハーバード大学などで学んだことをアンラーン(学びほどく)しながら、ソーシャルイノベーターとして様々な革新的な教育の実験を行なっている。ローカリゼーション、ギフトエコノミー、人生の脱学校化(deschooling)の世界的なリーダー。
マニッシュが大切にしていることは、みんなが自分のギフトを自覚してリーダーになることと、ローカル/分散型の活動をつなげていくこと(統一するのではなく)。彼は、ギフトの精神で活動を広めながら、社会的弱者に雇用も生み出している。
僕には、忙しそうに見えるけど、彼は「僕は何もしてない。ただ、あの人としゃべって、この人としゃべって。それだけのことだよ。」
彼の独特な特徴としては、秩序/常識を妨げること。インド人特有の性質なのか、彼なのか、この活動に欠かせないアンラーニング(最後の方に説明がある)なのか。でも、彼といるとすごく自分の「囚われ」に気づかされて、視野が広がっていくのを感じる。
いつか、日本に呼びたいと思っている。
なんでもバーシティ -versity
「君がやっているのは、river-versity(川大学)だ」
「それこそ、media-versity(メディア大学)」
「Farm-versity(農大学)をやっているこのすごい人と話した?」
「知っているか?彼は、prision-versity(牢屋大学)を運営しているすごい人なんだ」
と、マニッシュは次々と「〇〇バーシティ」を連発する。
そこの意図は、権力構造(政府認定の大学)から「学び」を取り戻して、自然とのつながりや生態系の再生、地域とのつながりや再生に取り組んでいる人たちが、自信を持って自分たちがやっていること(多くの場合は金銭的な収入に繋がらなかったり、権力層に見下される取り組み)の重要さを自覚できるようになること。
君もきっと〇〇大学の実践者
学びの多様性(コンテンツだけではなく、どう学ぶか/教授法)を強調する意図もある。
一般的な大学の教育(慣行教育)は、専門家が「分かっていない人たち」(学生)に「有用」な情報を一方的に伝えて、学生は講師が正解だと決めたことをテストや論文で再生産する。学びの権力者の言う通りにできればできるほど、社会的地位が上がりやすくなる。一年半通った、東京大学の大学院はまさにそんな感じだった(教員や学生はみんな素敵だったけど、大学の構造が極めて抑圧的だった)。学生のイキイキさがどんどん消えていって、2年目にはとにかく大学に求められている内容の論文を作成して、就職先を確保する「現実的」なマインドになっていったのが印象的だった。
農家と一緒に農作業をすることで、食や生きることについて学ぶことはたくさんある。先住民と暮らす事で、大学では教えられない、深い叡智や実績のある持続可能な在り方について学べる。お産婆さんや自宅出産したお母さんから、お医者さんからは聞けない、命についての感動的な話やつながりの世界について気づかされる。森の中に身を置くことで、「人間」と「自然」を分けてしまう大学や現代社会では得られない、言葉を超えた真実と出会える。
現代教育で育った人たちに、これらの学びや存在の重要さをアピールするために、遊び心のある感じで〇〇バーシティって、連発している感じがした。
教育や教えることは、偉い人や専門家が独占するものではなく、みんなが取り組んでいるコモンズ。地球民主主義活動。
今回のギャザリングは、川の中でラフティングやカヤックをすることを通して、川の性質について体感的に学んだり、恐れや緊張があるときに自分の心身がどう変化したり、チームワークなどについて学んだ。そして、心の状態や人生がいかに川のようなものであるかの深い気づきもあった。まさに、river-versity(川の大学)。
そして、学びと遊びと暮らしと自然の間にあった境界線が消える。
平和の巡礼者たちとの出会い
エコバーシティギャザリングで印象的なのは、出会う人たち
2022年のアジアエコバーシティギャザリングでは、内戦中のミャンマーから亡命していた民主主義活動家や、政府と大企業から森と文化を守ろうとしているカレン族の人や、カヴァ儀式のコミュニティ活動をしている若い青年、自然との共存に取り組むGaia Ashramの創始者などなど、かなり刺激的な出会いが沢山あった。日本の日常生活ではあまり出会わない、多様な人たち。
今年も、また面白い人たちと出会ったので、ちょっとだけ紹介したい。
インドのディーケン
スラム街出身の超貧乏な幼少期から、19歳から金融業のイケイケの世界で稼ぐようになって、違和感を感じながらも欲に囚われ、高収入マネーゲームを辞められなかった。ギフト活動を広めているニップン・メッタやサービススペースと出会い、一気にservice(奉仕)に励むようになり、持っているお金を一気に使い切った(人にあげたり、高級ホテルに泊まったり、なんでも)。その流れで、ガンジーアシュラムで奉仕者をしたり、ヨーロッパの難民支援にも取り組んできた。今は、マニッシュと立ち上げたPrison-versity(牢屋大学)の主要メンバー。
イタリアのミカエル(たぶん)
人道的支援にパッションがある彼は、難民の収容施設に出向いて、難民の生の声を発信するラジオを行なっていた。政治のコマやメディアのネタとして利用される難民を、人間として尊重し、それぞれの人が自分の言語(多くの人は到着した国の言葉や英語が話せない)で、表現したいことを表現できるラジオ。アナーキストコミュニティで、暮らしていたとも言ってた気がする。
UNLEARNING アンラーニング
エコバーシティの中心的なプラクティス(実践)。現代社会の問題を再生産する世界観/常識(「私たちは、消費者/労働者である」「自然と人間は分離している」「世の中は弱肉強食」「学ぶとは学校で行われること」「学ぶとは左脳(理性)で行うこと。体、感覚、感情は関係ない」「環境破壊と弱い人の搾取は経済的にしょうがない」「経済とは資本主義のこと」「科学が正しい」「子供や学校教育がない人は何も知らない」「点数が高い人がえらい」「いうことを聞かない人は、悪い人」「悪い人を苦しませる(罰する)ことが正しい」「男尊女卑」「人生で目指すことはお金と地位(女は子供を産むこと)」など)を、植え付けられたことと、それが必ずしも真実ではないことに気づくこと。そして、意識から解きほぐしていくこと。
そう簡単ではないけど、僕たちの想像力を縛る「常識」を解いていかないと、自分の人生や社会を根源的に変えることは難しい。
リチュアル(儀式)
2回のエコバーシティギャザリングで特に印象的だったのは、足を洗ってもらうリチュアルだった。1回目では、最終日にお互いの足を洗う行事でギャザリングをしめて、2回目はマニッシュが最後の夕食に向かう途中で、参加者の足を洗っていた。
言葉だけだとあまり伝わらないだろうけど、リーダーの彼が、地面に座りながら、みんなの足(30人とか?)を洗う行為は、かなりパワフルな体験だった。敬意、謙虚さ、対等さ、親密さ、命の祝福、LOVE。
丁寧に洗ってもらった足で、川の辺りまで裸足で歩いて、みんなと、沈黙の中、キャンドルと星の光だけに照らされた夕食は、格別な体験だった。PRESENCE
エコバーシティでは、リチュアルをとても大事にしている。
喜びからの奉仕
to serve from joy and love
マニッシュやエコバーシティギャザリングに来る人たちから、受け取ったメッセージ
ガンジーや各地の平和革命家たちから受け継がれてきた、力強い人類愛、地球愛、truth 真実に向かって歩み続けるみんなの在り方には、魂が震える
こういう人が本当にいるんだ
しかも、沢山いる
ぜひ、エコバーシティギャザリングに参加してほしい
そして、日本でエコバーシティ運動をしっかり根ざしたいと思っている。
UNLEARN
OPEN YOUR MIND
SERVE ALL LIFE
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最近撮った、エコバーシティ運動について、僕の理解を話している動画