【パーマカルチャー経済学】資本主義から命の経済へ

年に一回開催している、パーマカルチャーデザインの集中講座で、「パーマカルチャー経済」についてのセッションを担当している。

今回は、自分が「経済」について、ここまで学んださまざまな学びをまとめてみたり、新しく受け取ったタネとかをみんなにシェアした。

講義の間に、「で・しリスト」(できること・して欲しいこと)という地域通過のアクティビティも行った。地域経済や資源の循環について、体感的に学ぶすごくオススメのワークだから、いつか是非やってみて。ネットに記事も載っている。

僕のここまでの学びをより多くの人とシェアしたくなったので、簡単にまとめてみた(まとまりきれていないけど)。パーマカルチャーの倫理/考え方の一つが “share the abundance” 豊かさを分かち合う。

みんなでシェアすれば、豊かな世界に今すぐ実現するよ。

I hope you enjoy


序章:SYSTEMS THINKING

『氷山モデル:今、教育で起きていること』
              (出典: 文部科学教育通信 No.270 2011・6・27

ここからの話は、システム思考をベースにした、一番レバレッジがある(影響力が大きい)「メンタルモデル」、仮定/信念/価値観から探求を始めている。下の図で1〜3あたり。

https://eijionline.com/n/n4d53e5328b08 より

シンプルに言うと、細かい数字(税金とか助成金とか)を変えるよりも、経済システムの目的、在り方、僕たちが何を信じるか、どこに命のエネルギー(時間、想像力、労力とか)を費やすかの方が、大きな変化を引き起こすパワーがあると言うこと。

そう言うわけで、前提から問い直そう!

パーマカルチャーは、大地/生態系に根ざした暮らしや社会のデザイン。SDGsなどを、より具体的にみんなが総合的(ホリスティック)に実践するための分野でもある。

農(食糧生産や自然の再生)が中心にあるけど、経済や教育、建築、テクノロジー、コミュニティデザイン、政治なども扱えるデザイン作法。

パーマカルチャーのメガネで、ECONOMY 経済を捉えてみよう。

まずみんなに聞きたいのは、「経済」って一体何?

みんなにとって経済って?

経済ってなんで大事なの?

みんなは日々、どう影響されている?

受講生から出てきたキーワードは、「お金」「交換」「経世済民」などがでてきた。

パーマカルチャーの根っこにあるのは、3つの倫理。

  • Earth Care 地球を大切に
  • People Care 人を大切に
  • 3つ目は、さまざまな表現がある。Fair Share(平等に分かち合う、例えば先進国と発展途上国)Share the abundance(豊かさを分かち合う)Future Care(次世代を大切に)

今の主流の新自由主義資本主義経済は、環境破壊と弱者の搾取と次世代への負担が特徴的だと僕は感じている。一部の人(だいたい年上の男性)がどんどん富と権力を集約するデザインになっている。

僕は、できるだけ多くの人が豊かになる経済を創造したい。とくに、女性や若者、子供たちが安心して、豊かに生きられる社会を育む経済。

非暴力コミュニケーションの先生ミキ・カシュタンから聞いた、画期的な経済のパラダイムシフトの話が僕の中で響いている。

今の経済は、資源がある人(お金持ち、権力者、大企業、先進国)に資源がどんどん集まる経済のデザイン。そして、彼らが誰にどのように資源を分配するかを決める特権を持っている。

母乳経済は、母親が子供に母乳を与えるような経済。必要としているところへ、自然に資源が流れる経済。

資源が集まっているところに、資源がさらに集まるのは、効率が悪いだけではなく、格差がどんどん広がっていく。

資源が必要なところに、資源が流れていけば、一番効率よく効果的に必要/ニーズが満たされていく。

僕たちは、みんな母乳経済(ギフトエコノミー)でここまで育ってきたよね。当たり前すぎて気づかないだけかもしれない。

経済の話をするときに、区別すると良いのは倫理/storyと実践/日々の実践。

意識が向きやすいのは、日々のお金とのやりとり。仕事や買い物。それとともに、僕たちは皆、お金や経済のある「お話し」を信じている。これを理論と呼ぶこともできる。同じお話し/理論を共有することで、自然界にはない人工的なシステムを人類は創造し続けている。

例えば、日本銀行が発行している銀行券(みんなの財布の中にあるお金)に、価値があることを信じなかったら、ただの紙切れだよね。昔のお金、例えば貝とかをスーパーのレジで渡しても、スーパーではそれが「お金」であると信じている人はいないから、買い物は成立しないよね。

コスタリカのジャングルにいた時、人間以外、経済とお金について考えたり、悩まされたりされていないのが、僕にとっては衝撃的な気づきだった。

人工的に作られたものだから、もっと健全なかたちに創造しなおすこともできるはず。

僕が生まれ育った「宗教」は資本主義教と思っている。

その宗教で唱えるマントラ(お経)は
「お金がないと食っていけない」
「お金がない」
「時間がない」
「GDPが。。。市場が。。。株価が。。。投資家が。。。」
「経済成長、経済成長、経済成長」

でも、より広い視野で経済を捉えたとき、こういう光景が僕には見える。

経済や人間の生活に必要なエネルギーのほとんどが太陽光由来(石油も含め)で、誰も太陽にお金を支払っていない、宇宙からのギフト。まさに、宇宙経済。

そして、生態系が存在するから、人間が存在できて、人間は社会というものをつくってきて、社会の一部の機能を経済とよんで、経済の一種類が「貨幣経済」だったり「資本主義経済」とかって呼ばれるお話しと仕組み

ここで強調したいポイントが、資本主義やグローバル経済が崩れても、生態系が健全であれば生きていけること。でも、生態系が崩れたら、経済の仕組みも崩れるし、生きていくこともできなくなる。

命のボトムラインは健全な生態系。

そこからズレた経済や政治的な思想と仕組みは、多くの苦しみを生み出し、いずれは破綻する。

僕たちは、そこが分からなくなる、資本主義教の信者として育てられていると僕は思っている。

【共産主義=独裁政権(ソ連・中国)】【資本主義=民主主義(西洋)】とも思い込んでいたり。それ以外の経済は、バター/物々交換くらい。

目指すべきは、イギリスやアメリカのような経済大国。そのほかは、みんな遅れている。

意識すべきことは、お金、GDP、経済成長、株価、年収、お金持ち、マネタイズ、コスト削減、最先端、タイムイズマネー。。。

みんなで唱えるマントラは、
「お金がないと食っていけない」
「お金がない」
「時間がない」
「もっと頑張れ」

僕の娘でさえ、2歳からお金や財布に関心をもち始めていた。そして、お金と物を交換する経済の仕組みもある程度理解していた。

自然の「経済」を考えてみよう。

自然は増える経済。

種を植えて、植物が元気に育つと何十倍、何百倍と種が増える。

すごくない?!!!(半端ないリターンだよね)

人間と全ての生物は、この自然経済(宇宙経済)で生かされている。

時系列で主流の経済思想/仕組みを僕の理解でまとめたもの

最近、一般的に思い込まれている経済神話について関心を持ち始めている。活動仲間のヘレナノーバーグホッジがよく言うのが、「持続可能な社会を実現するためには、私たちは経済についてもっと理解する必要があるのです。」

僕も大学で経済学を勉強したんだけど、経済学で教えられている土台になっている前提が現実を反映していなくって、ずっと違和感を感じてきた。例えば、homo economicus 経済人

もう一つの危ない神話は、物々交換の限界を解消するために貨幣経済が生まれたという根拠のない話し。

The AtlanticのThe Myth of the Barter Economy(バーター経済の神話より)

アダム・スミスは、通貨経済よりもquid pro quo(交換条件)システムの方が先だと言っていましたが、彼が正しかったという証拠はありません。

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物々交換が登場したといっても、それは純粋な物々交換経済の一部ではなく、そこから貨幣が生まれたのではなく、貨幣から物々交換が生まれたのです。例えば、ローマが崩壊した後、ヨーロッパの人々は、それまで慣れ親しんだローマの通貨の代わりに物々交換を利用しました。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの人類学教授であるデビッド・グレーバー氏は、「私たちが知っているほとんどのケースでは、(物々交換は)お金を使うことに慣れている人々の間で行われていますが、何らかの理由でたくさんのお金を持っているわけではありません」と説明します。

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経済学の教科書や一般の人々の意識の中では、物々交換が実際にお金の前身であったという話が広く知られていますが、私が話を聞いた学者の中には、物々交換が実際にお金の前身であったという証拠を知っている人はいませんでした。そもそも物々交換があったとは誰も信じていなかったのではないか、という意見もあります。この考えは、現代の経済システムの文脈を単純化するために使われた粗いモデルであり、過去の経済システムに関する真の理論ではありません。

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物々交換という考えは、歴史を大きく変えたのかもしれません。。。


「経済学の教科書の基礎となっている世界像は、…今では私たちの常識の一部となっていて、他の可能な取り決めを想像することは難しい」と、『Debt: The First 5,000 Years』の中でグレーバーは書いている。

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例えば、イロコイ族のコミュニティでは、ロングハウスに物資を備蓄していました。そして、女性の評議会がそれを分配していたのです。また、”贈与経済 “に頼る先住民もいました。

貨幣経済と物々交換の前は、多様な形のギフトエコノミーが主流だったという研究がある。

資本主義教のメガネを外して、主流の経済神話を手放さない限りは、より命を養う経済を創造するのはなかなか難しそう


チャールズ・アイゼンシュタインによる、ギフトエコノミー(ギフト文化)に必要な4つのシフト。

  • Consumption to Contribution
  • Scarcity to Abundance
  • Transaction to Trust
  • Isolation to Community

ギフトエコノミーについての、最近書いたGreenzの記事

ギフト経済(ギフトエコノミー)ってなに? ソーヤー海が経験した、お金の呪縛から解放。そして貢献し合うことで成り立つ経済の可能性。

ギフト経済(ギフトエコノミー)にシフトしたい。でも、どう暮らしに取り入れていったらいい? ソーヤー海に学ぶ。


ここからは、幾つか具体的な「かたち」を紹介したい

ここまで扱ってきた経済理論やストーリーをある程度理解できると、仕組みや形の意味がより深く理解できると思うのと、経済の仕組みや形の創造者になれると思う。

既存の経済システムでパーマカルチャーで稼ぐことができる時代になってきた。オーストラリアやアメリカなどでは、パーマカルチャーを教えたり、パーマカルチャーのプロデザインナーとして、稼いでいる人はどんどん増えている感じがする。日本はこれからかな。。。

でも、僕はみんなともっと大きな夢を見たい。もっと深い変革を育みたい。パーマカルチャーを新たなビジネスセクターにすることよりも、経済システムや社会システムそのものをパーマカルチャー化していって、より多くの人が豊かに暮らせる世界をつくりたい。

ヨガみたいに、世界中で普及したものの、ヨガのエッセンスがヨガ資本主義に飲み込まれてしまった感じがする。パーマカルチャーは、そうなってほしくない。

新しい流れに役立つのが、新たな仕組みや形。

簡単に幾つか紹介したい。

9つの資本

これは記事にしたからそれを参考にしてね

GREENZ 世の中はお金だけじゃない。「9つの資本」で、みんなの身の回りにあるものを可視化し、“豊かな経済”へのストーリーを編集しよう!

最近、とても興味があるCOOP/cooperative/コーポラティブ/協同組合。

日本だと、JAとかCOOPスーパーのイメージが強い感じがするけど、もっともっと深いんだよ〜

協同組合はかなり歴史があって、民主主義運動と密接につながっているので、ぜひ調べてみて。

参考になるかも
【第九回】賀川豊彦を増やせ!COOPの「はじまりのとき」を深くアツく語ったぜ。

そして、ワーカーズコープが特に可能性がありそう!

助け合いの生態系とも言える。

これからは、cooperative/協同組合が僕たちの安心と安定を支える経済の仕組みだと思い始めている。利益を主目的にする経済ではなく、一人一人の健やかさ、コミュニティの豊かさとレジリアンす、環境の再生。まさに、パーマカルチャーの倫理。

トランジションタウントットネスから生まれたREconomyプロジェクトもとても面白い流れ。

GREENZ 人口8,000人のまちが「ローカル起業」で世界の注目の的に。お金だけじゃない、マッサージも空き部屋も投資になるリコノミープロジェクトとはなにか? ジェイ・トンプトさんに聞いた

トットネスからのインスピレーションもあって、いすみ市では地域通貨(米/マイ))を始めたり、ローカル企業フォーラムとかも毎年開催するようになった。

GREENZ 参加者全員が主役。地域で起業家をサポートする「いすみローカル起業フォーラム」で、お金が循環する、幸せの自給率が高いまちをつくる。

ヘレナ・ノーバーグホッジが先導してきたローカリゼーション運動はものすごく重要な文脈とムーブメント。僕の経済の理解を大きく影響してきた。

ローカリゼーションを調べると、具体的なアプローチや取り組みが色々見つかるよ。

まだ、「懐かしい未来」を読んでなかったり、幸せの経済学を見ていない人は、Check it out! 超おすすめ!!!

ヘレナの活動仲間のマイケル・シューマン(経済学者、弁護士、BALLE ローカル経済社会ビジネス同盟の設立メンバー)の話もとても面白くてオススメ。

参考資料
いすみに、お金と『ありがとう』がぐるぐる回る強いローカル経済をつくるには?」マイケル・シューマンさん講演とワークショップ

アメリカで盛り上がるワーカーズ・コープ

最近、話題のサーキュラーエコノミー。政府や大手企業も取り上げていて、これから重要な流れになりそう。

ただ、ベースは資本主義だから、僕はあまり可能性を感じていない。

ドーナッツ!

美味しそうな新しい経済の概念。

自然環境を破壊することなく社会的正義(貧困や格差などがない社会)を実現し、全員が豊かに繁栄していくための方法論で、そのビジュアルイメージから、私たちに身近で想像しやすいドーナツと名付けられた。


わかりやすくいうと、下の図の緑色の部分(=ドーナツの食べられる部分)の範囲内で生活していこうということである。この緑色の枠は、人類にとって安全で公正な範囲、そして環境再生的(リジェネラティブ)で分配的な経済をあらわしている。


ドーナツより内側(中心)の空洞は、エネルギーや水、住宅など、人々が暮らす上で必須のものが欠乏している状況を示している。国でたとえると、インフラの行き届いていない途上国のようなものだ。その不足を埋めることで、社会基盤を緑色のドーナツ部分に引き上げることを目指す。

一方ドーナツの外側は、地球環境に過負荷がかかっている状態を示す。急激な工業発展による大気汚染や、海洋汚染、気候変動などが起こっているということだ。こちらも、従来の大量生産・大量消費のモデルから、循環型の経済モデルに変えることで、ドーナツの緑の部分に引き戻すようにする。


ドーナツの真ん中のように社会的な不足をすることなく、かといって資源全体の利用量が、環境限界である外側の円を突き抜けることもない。それがドーナツ経済学の目指すところである。

https://ideasforgood.jp/glossary/doughnut-economics/ より

まとめ

まとめたいけど、まとめられない。

まだまだ、付け足したいことはあるけど、長くなりすぎて誰も読まない自己満記事になりそうだから、一旦ここでself-STOP!

ここに含められていないとても重要な要素が政治。政治と経済は密接に結びついていて(例えば、税金を何に使うかとか、市民の健康と企業の利益にまつわる法律を設定したり)、政治も変えていかないと、経済を大きく変えるのは難しい。

初代のパーマカルチャー実践者の僕の印象では、変わらぬ国レベルの政治に諦めて、自分たちの土地でできることをやろうっていうスタンスだったんじゃないかな。そこから、着々と政治や大きな経済を変えないと、人類に未来がないと気づいてきた次世代のパーマカルチャー実践者がどんどん動き始めている。

経済も政治も変えられる。

なぜかというと、人間の創造物だから。

経済に関心を持って、その致命的な問題点を理解して、懐かしい未来のストーリーを創造していこう。

それこそが本質的な希望じゃないかな。

読んでくれてありがとう。

一緒にやろう!


BONUS

資本主義の始まりと神話については、ジョージ・モンビオのThe Guardianオピニオン記事 (パンドラ文章公表後)が面白かった

Trashing the planet and hiding the money isn’t a perversion of capitalism. It is capitalism

地球を破壊し、お金を隠すことは、資本主義の倒錯ではありません。これこそが資本主義です。

資本主義は離島で生まれたと言っても過言ではない。1420年にポルトガル人がマデイラ島を植民地にしてから数十年後、それまでのシステムとは異なるシステムを開発しました。島の名前の由来となった森林(マデイラはポルトガル語で木を意味する)を伐採することで、この無人島に新しい経済を構築するための白紙の状態(テラニュリアス)を作り出したのである。ジェノバやフランドルの銀行家が資金を提供し、アフリカから奴隷となった人々を送り込み、砂糖の栽培と加工をさせた。彼らは、土地、労働力、貨幣がそれまでの社会的意味を失い、取引可能な商品となるような経済を発展させた。

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資本主義の典型的な好不況のサイクルの中で、ポルトガル人は資本を新たな開拓地に移し、最初はサントメに、次にブラジルに、そしてカリブ海に砂糖プランテーションを設立したが、いずれの場合も資源を枯渇させてから移動した。ムーアが言うように、地理的に新しいフロンティアを獲得し、使い果たし、部分的に放棄することは、資本主義と呼ばれる蓄積のモデルの中心となっています。マデイラ島のような生態系や生産性の危機は、システムの悪い結果ではありません。それがシステムなのである。

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資本主義の偽りの歴史は、1689年にジョン・ロックが『第二政府論』の中で公式化した。ロックは、「はじめに世界はすべてアメリカであった」と述べています。人間のいない白紙の状態で、富はただそこに座っているだけで、奪うことができました。しかし、マデイラ島とは異なり、アメリカには人が住んでおり、彼の言う「テラニュリアス」を作るためには、先住民を殺すか奴隷にする必要があった。彼の主張によれば、世界に対する権利は勤勉さによって確立される。つまり、人間が自然の富に「自分の労働力を混ぜた」とき、彼はそれを「自分の財産とする」のである。しかし、大量の自然の富を手に入れた人々は、自分の労働ではなく、奴隷の労働を混ぜていた。自然の富に価値を付加し、努力と事業によって豊かになるという、資本主義が自らを正当化するおとぎ話は、人類史上最大のプロパガンダである。

翻訳はDEEPL

パーマカルチャーツアーやってるよ。