パーマカルチャーでつくる新しい世界「カウンター・ソサエティ」

東京アーバンパーマカルチャーには、海外からの取材や訪問の問い合わせが相次いでいます。人も少ない活動ですし、ミッションは日本の変容なので、あまり対応していないのですが(ごめんなさい!)たまには「これは同族だ」と思える人をお迎えし、時間を共に過ごすことがあります。イタリア人のフランチェスコもそんなひとり。
エルサルバドル、ホンジュラス、グアテマラ、メキシコ、アメリカ、カナダ、キルギスタン、カザフスタン、韓国、中国を経て日本へ到着する前にこんなステキなメッセージをくれました。

フランチェスコからのメッセージ
こんにちは。僕は今世界を巡りながら「counter-society(対抗社会)」と僕が呼んでいるコンセプトについて学びを深める旅をしています。
その「対抗社会」とは、パーマカルチャーコミュニティ、インテンショナルコミュニティ、 コ・ハウジング(共同生活)、世界をより良い場所にしようとしているあらゆる活動を対象としています。
旅の終わりには一冊の本を仕上げる予定です。そして短編ドキュメンタリーフィルムを仕上げます。

ここまでの旅はそれはそれは素晴らしくて、世界は喜びとグッドバイブスとキラキラの魂で満ちていました。僕は、自分のことを「母なる地球=パチャママ」の息子だと思っていて、常に自分の内側の平和を探し続けています。時にはそれが難しいこともあるけれど、たいていはどんな暗闇の中にあっても、その明かりがシンプルに成長し続けていると感じています。
会えることを楽しみにしています。

レミ補足:1960年代から1970年代にかけカウンターカルチャー(対抗文化)という世界的なムーブメントがありました。既存の政治・教育などのシステムに変わるものを模索し実践する動きでした。パリ、ロンドン、アメリカ西海岸、東京など世界中で学生紛争やヒッピームーブメントが起き、社会や暮らしで50年にわたり実践した上に、アメリカ西海岸やポートランドのリベラルで環境保護的な社会ができあがっていると感じています。東京アーバンパーマカルチャーは、その土壌の上に育っています。

プロフィール見ると、まだ31歳で濃密すぎる人生!この豊かな人生経験を聞きながら、東京の仲間たちとざっくばらんに「より良い社会」をつくるトークをしてみたい。
「地球に良いことを、楽しく。」をテーマに多摩川河川敷のクリーンナップをしている世田谷の仲間DOGsとの共催でイベントをしました。ここでは、プライベートで聞いた話も統合し記事にしています(文責:レミ)

パーマカルチャーとは「意識のあり方」

僕にとってパーマカルチャーとは自然農(ナチュラル・ファーミング)を指すのではなくて、どんな意識(コンシャス)で日々を生きるか、何を選択するか、減らすのか。そういうすべてのことを意味します。その意識を持っている人が、隣のことを触発(インスパイアー)していくことができると思っている。

心を開いて楽観的であること(Open & Optimistic)で、そういう人が来るようになる。
これまでの経済とは異なる道(another way)が可能であることを、生き方で見せたいと思っています。

ごく普通の、イタリアの家庭の出身

数日間一緒に暮らしていると「食事はみんながそろってから食べたい」「急ぐことで、共にいる時間の質をおとしたくない」という優しい中に確かさのある態度を感じます。
出先から戻るのが遅くなって「ごめん冷蔵庫の中のものなんでも食べてて」と送ると「僕はあんまりお腹が空いてないけど、君のためにランチをつくっておくね」と家族以上の優しさです。この感覚知ってるぞ。かつてブエノスアイレスで仕事をしていた時に人々から感じたり、アメリカ留学時代にスペイン人の友人たちから強烈に匂っていた感覚だと思い出します。ラテンの人たちの持つ、仲間や家族へのゆるぎない忠誠の表現です。
ただ会話しているだけで急速な周波数調整を受ける。そのチューニング先は愛!
きたぞー、ラテン(笑)
どんな家庭で育てられたのか気になります。

イタリアの北東、ほぼスロヴェニアとの国境に近い Pordenone  ポルデノーネ  という街で生まれ育ちました。おじいちゃんがファーマーで、開発の波が街に押し寄せ工場が誘致されると農地を売りました。よくあるような「金が至上」の世界の話です。
両親はシンプルな暮らしを心がける人たちで、イタリアでは平均的なごく普通の家庭だよ。2歳上の兄と、猫が2匹。
食事時には、テーブルの上をすべて片付けて、食事が終わるまでは他のことを一切しない、というような生活の基本を守ることに母は徹底していた。

簡単なものだけど、と作ってくれる料理はどれもシンプルで美味しくて、イタリアンレストランの味がします。同じ材料でいったいなぜ?

人生に必要なすべてのことは、学校じゃないところで学んだ

グラフィックデザイン、コミュニケーション、大道芸、音楽、執筆とマルチで、自転車で世界をめぐるくらいの体力と精神力もあり、さすがイタリア、レオナルド・ダ・ヴィンチの国。レッジョ・エミリアのような世界から視察も来るような教育もあるし、さぞや受けてきた教育がいいのでは?

受けてきた教育は最低(horrible)だったと思っていて、人生に必要なすべてのことは、高等教育を終えた後に学んだ。

これだけやりたいことが明確で、できちゃうんだったら、そうかも。
あらゆる楽器からDJまでなんでもこなすことが見てとれるYoutube。ポリティカルDJってあるんですね(笑)世界10か国をめぐるミニマムな荷物の中にもしっかりウクレレがおさまってました。「音楽がないなんて考えられない」とのこと。

いま直面しているチャレンジ

31歳ですでに3冊目の著作の執筆中。年に1冊のペースで本を書いていて、安定した仕事も持っていて順調に見えるフランチェスコに、いま気になっていることを聞くと、たびたび友情についての答えが返ってきます。アクティビストしてると、これありますよねー。

いちばん残念だと感じているのは、僕が大切だと思っている価値観や生き方を、古くからの友人たちに理解されないこと。
大学まではまだよかったけど、社会人になって就職したち家庭を持ったりすると、仲間たちが夢をあきらめていく。社会が夢をあきらめさせてしまうと感じています(Society cut dream)。僕が仕事を辞めて旅に出ようとすると、「仕事を辞めるなんて正気じゃない」とか「無鉄砲だ」と言われて応援してもらえないことがあって。昔はみんな夢を見てたじゃないか、Come on! ってもどかしくなる。

そんな中でも自分の夢を貫くために必要なことは、良い栄養を夢に与えること(Good food to feed my dream)それは、素敵な人たちに出会うこと。
この10年働いてお金を貯めては旅に出ての繰り返しをしてきました。

世界を自転車のスピードで回るから見えるもの

飛行機でイタリアから出入りする以外はすべて自転車の行程です。1日に100km走り「1か国でしっかりみれるのは1プロジェクトくらい」とのこと。

タイなどでは、都市で経済的に少し成功したら、都市の汚染にうんざりして田舎に暮らす成功者が増えていました。でも、田舎に越しても生活スタイルが改まらないと、そこで新たな汚染を生むだけだと感じた。
その点、バンクーバーやトロントにはエコヴィレッジもある。
日本などの先進国の田舎は過疎化が明らかだけれど、南米ではどこに行っても子供がいて、田舎でもそれは変わらなかった。

そうか、アーバンに人が集まることが避けられないのであれば、そこをエコヴィレッジ化していくこともできるのかも?

五つ星運動って、ぶっちゃけどうなの?

イタリアといえば、社会風刺のコメディアンベッペ・グリッロが政権までとった「五つ星運動!」が気になってしょうがありません。
あまり日本では知られてないですが面白いです。詳しくはこちらをどうぞ

イタリア5つ星運動の成功理由とは?コメディアンとIT起業家が結党

「初のデジタル政党によってもたらされるのは脅威か希望か 〜イタリアで勝利を収める五つ星運動〜

直接民主主義(ダイレクトデモクラシー)のプラットフォームとしては素晴らしいと思う。出はじめの頃はグリーン・エコノミーとかシェア・エコノミーなどの、いいアイデアがあった。でも政治的なピラミッドがあって、それがあまりに高くて複雑化している。政権を取ると、右派と左派と入れ替わりで連携になり政策に妥協が出て、個人的には幻滅した。

政権を左派が取ろうが右派が取ろうが、政治が国内企業や国際金融に左右されることは変わらなくて、右派と左派で変わることといえば、移民対策くらい。

15年間、政治活動もしてきて、当時は朝起きてニュースを見ると、5分でフラストレーションの嵐になった。
こぶしをあげたらこぶしが返ってくる、叫んだら(スクリーム)叫び声が返ってくる。それに気づき、ニュースを読むのをやめたんだ。
そうして政治を脇に置いたら、人としてあること(human being)、愛、食べ物を分け合っておいしく食べること、ハグ、パーマカルチャーが人生に立ち現れてきた。同じエネルギーを注ぐなら、そういうことに注ぎたくなった。

とはいえ、世界的にシステム変革を起こすために団結できるようなアクティビズムはないの?と聞くと、

9.11のインパクトでみんな忘れてしまったんだけど、以前からある「アンチ・グローバリゼーション」は有望なムーブメントのひとつだと思っていた。

政治活動をやってみての学びは、結局のところ政治は利益(profit)で動く仕組みになっているから、そこに働きかけるより「対話」が必要。人をつなげる(コネクトする)ことこそ大事、というのが今の僕の今のあり方です。

そして、人の意識や集合意識が変われば政治やシステムが変わる可能性はある。
卵が先かニワトリが先かはわからないけれど。

アンチ・グローバリゼーションは、東京アーバンパーマカルチャーも力を入れている活動。
詳しくはこちらを。

「世界的「反グローバル化」の流れは統計にも表れている by ダイアモンドonline」

DOGsの創始者、Patagoniaの隼人くんと、世田谷から世界レベルで個人と社会の変容を促進しているつばさちゃん。TUPのエリー、ケンタロウくん、レミ。素晴らしい環境設営を隼人くんと仲間たちが、ケンタロウくんとつばさちゃんが通訳を、エリーがビジュアルノートテークをしてくれました。ナイスチーム、DOGs!

数日後、フランチェスコはヴィパサナ瞑想のため、鎌倉から千葉まで3日間の旅に出ました。
いすみで、TUPの先ちゃんにホストしてもらい、シンシアや道場の仲間たちとも会えたよう。
また西にリサーチに行って、成田空港へ戻る途上、11月後半から12月前半は鎌倉・東京方面へ来るのでイベント企画しまーす。
フランチェスコの旅は続く〜。

Francesco Ciprian Profile

1988年イタリア北東の都市Pordenone生まれ。建築修士号、グラフィックデザイン学士号を持つ。20歳の頃から、徒歩、ヒッチハイク、自転車、路上での大道芸など型破りな旅をしている。旅での逸話をまとめた本「I giocolieri delle bolle di sapone. Viaggi ed esperienze su questa terra」を2017年に、イランを自転車で巡った記録「La realtà che noi chiamiamo mondo(僕らが「世界」と呼んでいるもののリアリティ)」を2018年に出版。

現在はイタリア北東のUdineに住みグラフィックデザイナーをしながら著述を続け、できる限り旅をしこの世界で生きること、暮らすことについて学び続けている。
故郷でパーマカルチャーサイトを持ち、日本で知った「半農半X」の生活をすることが夢。

http://www.francescociprian.it/

Born in 1988 in Pordenone, Italy. Educations: Master degree in Architecture and Graphic Design Diploma.
For ten years he’s been travelling unconventionally: walking, hitch-hiking, biking, and busking on the streets.
In 2017 his first book titled “I Giocolieri delle Bolle di Sapone” (The Soap Bubble Jugglers) is a collection of stories and experiences from different parts of the world, published by Robin Edizioni, Italy.
In 2018, his second book “La realtà che noi chiamiamo mondo” (The Reality we Call World) was published by TreSogni Casa Editrice, Italy. The book presents a cycling journey across Iran.
He’s currently living in Udine, Italy, working as a graphic designer and still writing, traveling and studying about life in this world as much as he can.

LOOKING FOR THE COUNTER-SOCIETY, A CYCLING JOURNEY

以下を翻訳してくださる方、募集中!

If you want good music, maybe it's better to select it yourself than listen to the radio. If you want healthy food, maybe it's better to grow it in your own backyard. If you want honest information, maybe it’s better to seek truth from sources other than mainstream news and television.
Likewise, if you want a better life, you need to look for it rather than trusting that the government and institutions will propose and promote it. They promote an unsustainable economic growth that only supports their own interests. They do not care if we are constantly struggling against each other, divided by ideologies that require unconditional assent. The institutions expect that we remain blind and faithful to the party line.
But if we are inspired to seek a better life, brick by brick, we will dismantle the wall that separates us from those indispensable islands of resisting, fraternal, and rebellious societies that operate all over the world.

On December 4th, 2018, I began a long cycling journey from El Salvador, through Honduras, Guatemala, Mexico, the United States, Canada, Kyrgyzstan, Kazakhstan, South Korea, China and Japan.
The aim has been to visit a number of counter-societies and gain a greater appreciation for permaculture communities, co-housing systems, intentional communities, and eco-villages.

I chose the bicycle as my means of transportation because it leaves no impact on the environment. On this journey, it has allowed me to have independence and autonomy. Furthermore, the bicycle allows me to connect more closely with my hosts, as they can’t help but feel deep empathy when I ride up with my house on two wheels, tired and sincere. The bicycle is the key that opens my hosts hearts and their increases their willingness to share their stories.

After more than 20,000 km cycling across high mountains, arid deserts, green forests, and through pouring rain, stifling heat, and stinging snow, I'm now cycling through Japan. The search for the counter-society has led to extraordinary meetings and it cannot stop now.

トップ画像のビジュアルノートは、DOGsのメンバーでもあるアーティストの田辺エリー

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パーマカルチャーツアーやってるよ。