パーマカルチャーの問題/課題 「男性中心と出産・子育て」

パーマカルチャー愛好家として、2011年から日本でパーマカルチャーを普及する活動に取り組んで12年!

パーマカルチャーをより多くの人につなげるために、仲間たちと「Urban Permaculture Guide」や「みんなのちきゅうカタログ」という本を作ったり、最近完成した「Terra」というドキュメンタリーを制作したり、ブログ、youtube、講演で発信してきた。

2002年にカリフォルニア州立大学サンタクルーズ校(UCSC)でパーマカルチャーと出会ってから、中米、北米、ヨーロッパ、オーストラリア、東南アジア、日本のパーマカルチャー現場と事情を研究してきて、幾つかの重要な課題が明確になってきた。

活動仲間との会話やパーマカルチャーデザインコース(PDC)などでは話題にしてきたけど、改めて文章でまとめてみようと思った。

特別パーマカルチャーに問題があるというより、社会の縮図であるがゆえに存在するもの。「全ての命が大事にされる未来」を願うのなら、しっかりそこと取り組む必要があるから話題にしたい。

パーマカルチャーの合言葉は、the problem is the solution

しっかりシステムの中にある問題(エネルギーが循環していないところ)を理解して、より多くの命が活かされるフローをみんなと創造していきたい。

*難しいテーマだから、うまくニュアンスを日本語で表現できる自信がない。。。

男性が中心(パトリアルキー)

70年代に「パーマカルチャー」を発案したのは、オーストラリアの白人男性ビル・モリソンとデビッド・ホルムグレン。彼らが育ったオーストラリアは、イギリスから来た白人(多くは島流し)が「持続可能」な暮らしをしていた先住民を虐殺して、土地を開拓/破壊して、イギリス帝国流の「強い白人男性至上主義」の土台から発展した社会。世界中の多くの国同様、人種や男女差別も環境破壊も未だに根強く続いていて、先住民の状況は引き続き悲惨なもの。

そういう社会や人類のあり方に対するsolutionとして産まれたのがパーマカルチャーとも言えるけど、パーマカルチャー自体にその未解決の歴史と歪んだ世界観がしっかり混在している。

これは、ビルやデビッドの問題というより、彼らの限界だったんだと思う。これらは社会構造/人類の課題として僕は捉えている。パーマカルチャーが世界中に発展する中で、フェミニズムやソーシャルジャスティスの運動と融合していき、「強い白人男性至上主義」やパトリアルキーが問題視されている(主に白人から)。

僕がパーマカルチャーと出会いたての頃、コスタリカ、ニカラグア、ガテマラ、アメリカでお世話になったパーマカルチャー現場は、全て白人の男性が始めたところだった。白人の男性が抱えるランクと特権、そして差別的な言動や彼らのトラウマが、どこも共通の問題だった。

中米で出会った悲劇は、「アメリカの問題」から逃れようとした彼らが、その問題を自分のパーマカルチャー現場で再生産してしまっていたこと。皮肉なのは、パーマカルチャーデザインの楽園の中で、人間関係の地獄のドラマが繰り広げられていたこと。

Where ever you go, there you are どこに行っても、そこに自分がいる(どこに行っても問題からは逃げられない)。

彼らの共通点は、お金を動かせる/土地を手に入れられる、タフ(ストレスに耐えられる心身)、そして人間関係のトラブルが目立ってたこと。知識があり、原動力もあり、カリスマ性もあって人を惹きつけるけど、怒ると変身して強引に物事を進めたり、周りがひくような差別的な言動をたびたびしていた。

これも社会の縮図だと僕は思っている。パトリアルキーの中で強い男性として育てられた人たちと、それを受け入れたり、どうしたらいいか分からない周りの人の社会的トラウマの現れ。

日本も、パーマカルチャーを教えてきたのは、ほとんど男性。特に、パーマカルチャーデザインコース(PDC)のような「資格」がもらえる講座では。

日本で教えているPDCの受講生は圧倒的に女性なのに、講師はほぼ全員男性というのが毎年恒例の違和感。その「常識」と「構造」を変えたい仲間を探している。

ここでの重要なポイントは、男性が悪いとか、あの人が差別的だとかっていうことでは全くない。

社会で再生産され続けられてきた、歪んだ「常識」、世界観、構造、言動をどう変えるかのチャンスとして、僕はみんなと考えたい。

パーマカルチャーのethics 倫理/理念は、
earth care 地球を大切に
people care 人(自分も含め)を大切に
fair share* 平等に分かち合う
*三つめは、share the abundance 豊かさを分かち合う、future care 次世代を大切にと表現されることもある

女性と男性をより大切にする社会、権力や資源をより男女/人種の間で分かち合う社会、それがパーマカルチャー運動の目指す世界なんじゃないかな?

パーマカルチャーに出産と子育てがない!

子供が産まれて初めて気づいたのが、パーマカルチャーは持続可能な暮らしや社会のためのデザイン作法/運動なのにもかかわらず、出産や子育てについて触れることがほとんどない。

*自分の子供がでぎるまで、出産や子育てに意識がいかなかった。男性の多くはそう育てられているんじゃないかな。

パーマカルチャーのバイブル的な本、Permaculture Designer’s Manual(570ページ)では、あらゆる動植物の繁殖や生態系の再生について細かく扱われているのに、パーマカルチャーの中心にいる人間(人間がいなければ生態系は自然に再生していく)のことがほとんど扱われていない。

最後の章 Chaper 14 The Strategies of an Alternative Global Nation (オルタナティブなグローバル国家の戦略)で、浅くコミュニティ、政治、経済について触れるものの、出産と子育ての話がない。

公式コースのPDCの72時間の内容にも含まれていない(PDCによってエコビレッジやオルタナティブ教育という感じで、軽く触れる場合はあるけど)。

言うまでもないけど、出産と子育てがなければ、持続可能な人間社会はない。そして、これはただのコンテンツとして付け足せばいい問題ではなく、パーマカルチャーの致命的なデザインミスだと感じている。これもパトリアルキーの症状と言える。

資本主義社会では、男性がやった仕事に対価が出たり社会的に賞賛されやすいけど、出産や子育ては「女性がやっている当たり前のこと」(shadow work)として盲点になっていたり、過小評価され続けられているのと同じ問題。

その世界観や構造的なデザイン上、男女の対立は続き、現実を反映していない分、誰か(大抵女性や立場が弱い人)がデザインの不具合の「調整役」としてそのこぼれ玉を拾い続けることになる。

パーマカルチャー運動で女性(子供や赤ちゃんも)がより中心的な存在になれば(権力構造の中でも)、このような現代社会の「裏方」(日々の暮らし)になってしまっている重要な部分がしっかり取り入れられた、パワフルな世界観と教育に進化できると僕は信じている。

「全体性のデザイン」が前提のパーマカルチャーで、出産や子育て(後、高齢化)を見落とし続けてしまうと、描いた理想には含まれていない不都合の現実が現れ続けてしまう(とくに夫婦や家族関係)。

「強い」男性たちだけがリーダーであったり、教育を担っていることによって、見えてない、扱えてない「現実」がたくさん出てきてしまう。

男女の対等さ、男性性と女性性の融合の重要性は、「正しさ」のためではなく、調和、みんなの健やかさや、全体性を捉えて扱うために欠かせない。

僕は、パトリアルキーという構造的な問題に加担しているし、得をしている面もあるし、ダメージを受けている面もある。一人では変えられないけど、できる限り、もっと健やかな社会に自分の人生を活かしたい。

僕も、日本のパーマカルチャー運動においては立場が強い分、こうやって声に出したり、構造的な変化に取り組むことに努めたいと思っている。

自分の真実、自分の希望のために。

いい案があれば、教えてくださいな。

*パーマカルチャーを教えたい女性を応援する取り組みを考え中なので、関心がある人はつながろう。

つながりを取り戻そう

It’s time for permaculture to evolve

パーマカルチャー起業に取り組む女性リーダーたち
Picture from regenepreneurs

その他の気になる問題

→ PDCは左脳中心の教育傾向

→ 資本主義的な productivity「生産性」efficiency「効率」の強調。命(果樹や家畜など)の生産性を最大化を目指す思考回路。

→ 土地の所有が前提とした傾向

→ 構造的な抑圧の認識が薄い
例えば、土地を手に入れられる人と手に入れづらい人(先住民、人種的マイノリティ、貧困層、女性など)への認識と支援が薄い

→ Appropriation 世界中の先住民やお百姓さんへの配慮や深い理解

→ apolitical movement 政治への関わりが薄い(人類の抱えている多くの問題に、政治が大きく影響している)

→ ableism (エイブリズム)元気で体が動かせることが前提になっている。障害がある人や高齢者があまり教育や話題の対象になっていない。

パーマカルチャーツアーやってるよ。