【システム思考】成功者はさらに成功する

システム思考には、「成功者はさらに成功する」とよばれる悪循環の構造の考え方があります。

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「持てる者は与えられる」と言います。例えば、電力の大口ユーザーは小口ユーザーよりも電気料金が安いです。郵便料金も、一般の人より、大口の利用者のほうが割安ですし、税金にしても、所得税よりも資産家のキャピタルゲイン(株などの資産売買による収入)にかかる税金の方が低くなっています。
 ごみ焼却場や集積場、環境汚染を引き起こすような工場は、どう見ても低所得者の居住地に偏って建てられていますし、貧しい家庭の子供は、最低レベルの医療や最低レベルの教育を受けることになります。
 「成功者はさらに成功する」は、公平ではないのです。もっとも、成功した人たちは、「世の中が自分に与えてくれる多くのご褒美は、自分の努力のおかげだ」と信じて、懸命に働いているのですが。。。。

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 証券市場でも、大手業者はより有利な情報にアクセスでき、内部情報も手に入れやすく、さらに大儲けできます。大きな企業になれば、広告予算や投資金額はさらに増え、会社が抱える研究者や会計士、弁護士の数も多くなり、販売店やサプライヤーに対する影響力も強くなり、物流や通信回線を独占したり、政治家をお金で動かしたりすることがやりやすくなります。金持ちは政治家になり、金持ちであるか金持ちのご機嫌をよるような人間以外は立候補できないような政治システムを作ります。
 「成功者はさらに成功する」では、お金や人材などの資源が、最も力のある人たちに振り向けられます。必ずしも最善の、あるいは最も効率のよい人たちに向けられるわけではないのです。放っておくと、「成功者はさらに成功する」は、市場の競争も民主主義もだめにしてしまう可能性があります。

 問題はシステムの構造にあります。
 システムの中にいる人達のモラルのせいではありません。「成功者がさらに成功する」は、競争の勝者に、さらに勝つための手段を与えます。同時に、敗者を不利に追い込むものであると、とりわけ歪みをもたらします。
 このような非効率で不公正なシステムを生み出すのに、何も悪人は必要ありません。このゲームでは利他主義が命取りになることを見抜けるだけの賢さを持った合理的な人がいればよいのです。自分の子供が最上のものを得るためには、他人の子供は一生モノポリー*の敗者の地位から抜け出せず、決して家賃を受け取る側になることなく家賃を払い続け、チャンスに恵まれなくてもいいと考える親がいればよいのです。 

*モノポリー(英語:Monopoly)は20世紀初頭にアメリカ合衆国で生まれたボードゲームの一つである。プレイヤーは双六の要領で盤上を周回しながら他プレイヤーと盤上の不動産を取引することにより同一グループを揃え、家やホテルを建設することで他のプレイヤーから高額なレンタル料を徴収して自らの資産を増やし、最終的に他のプレイヤーを全て破産させることを目的とする。モノポリーとは英語で「独占」を意味する。 

「システム思考をはじめてみよう」 by ドネラ・H・メドウズ 枝廣淳子訳

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パーマカルチャーツアーやってるよ。